化学生態学

 化学生態学は、1970年ころより、“生物の信号化学物質”という生態学と化学の境界領域を扱うことを目的として誕生した研究分野です。化学 (chemistry)と生態学(ecology)が合わさった造語ですが、今ではこの用語が定着し、世界の国々で多くの研究者がこの分野で研究活動を行っています。
国際化学生態学会 (International Society of Chemical Ecology)も誕生してから25年経過し、毎年開かれる大会にも多くの人たちが参加しています。我々の研究室では、昆虫を中心として、その信号化学物質、つまり化学的コミュニケーションに関わる研究を行っています。
 以下にその概略を説明します。

同種昆虫間のコミュニケーション

 同種昆虫の間で交わされる化学コミュニケーションはフェロモンです。性フェロモン、警報フェロモン、道しるべフェロモンなどがあるのはご存知かも知れません。多くのチョウ目昆虫の性フェロモンは分析同定され、交信撹乱法で害虫防除に用いる方法も確立しています。我々の研究室では、昆虫の性フェロモン研究を一つの柱にして、行動学的、化学生態学的研究を行っています。

異種昆虫間のコミュニケーション

 捕食や寄生に関係する昆虫間に介在する物質はカイロモンと呼ばれています。寄生蜂が寄主を発見し産卵するのは、寄主の体にこのカイロモンという物質が存在するからです。寄主はなぜこのような物質を身につけているのでしょうか?この存在の意味を考えるのも研究の一部です。

昆虫・植物間のコミュニケーション

 昆虫が植物を食べるのは普通に見かける光景ですが、ではなぜ食べているのでしょうか?
もちろん、栄養にするためですが、その植物は食べるけれど他種の植物は食べられないのでしょうか?昆虫には自分の食べる植物に好みがあります。モンシロチョウがキャベツを、アゲハがミカンの葉を食べるのはご存知でしょう。好みがあると言うことは、葉の成分に好き嫌いがあると言うことです。これらの研究は、昆虫の食性が分かって飼育に生かせるだけでなく、害虫管理技術にも生かすことが出来ます。昆虫味覚や嗅覚、植物の分析化学の双方からのアプローチが必要です。