※ただいま更新作業中です(2022.4.19)

背景:捕食寄生性昆虫 〜寄生バチと寄生バエ〜

捕食寄生性昆虫の代表格である寄生バチ、寄生バエ類は、幼虫期に寄主(多くの場合、昆虫類)の体内外に寄生して成長します。そして最終的には寄主を食い殺し、自身は成虫になるという生活史を送ります。寄生バチ、寄生バエ類の種類ごとに寄主として使える昆虫の種類は限られています。

 

そのような寄生バチ、寄生バエ類は農業害虫を含む多くの昆虫類の主たる天敵としてはたらくため、自然生態系、農業生態系の双方において、生態系維持のために重要な役割を担うことが知られています。


研究トピック1:寄主をめぐる寄生バチ類の種間競争(藏滿)

 寄生バチ類、寄生バエ類は種多様性が極めて高く、かつ個体数も多い分類群として知られます。野外においては様々な場所で、寄主をめぐるメス成虫間や寄主の体内外に寄生した幼虫間の種間競争が繰り広げられています。私たちは室内行動試験や飼育実験による寄生バチ類の寄主探索行動や発育解析、フィールド調査による寄生状況調査などによって、寄主をめぐる寄生バチ間の種間競争の解明を目指します。


研究トピック2:樹木ー菌ー植食性昆虫ー寄生バチ間相互作用の解明(藏滿)

 植物の葉を摂食する昆虫を寄主とする寄生バチは、食害を受けた葉が出すにおいを手がかりに寄主を探索することがよく知られています。それと比べて、樹木の幹に潜む昆虫に寄生する寄生バチ類がどのようにして寄主探索を行うかは不明な点が多いのが現状です。そこで私たちは、樹木の幹を加害するキバチいう昆虫とその寄生バチ類を材料に、樹木とキバチと寄生バチ、さらにはキバチの共生菌までを含めた四者間の複雑な相互作用を解き明かし、樹木に潜む昆虫を寄主とする寄生バチ類の寄生戦略を解明することを目指しています。


研究トピック3:植食ー植生昆虫ー寄生バチの三者間相互作用(藏滿)

植物ー植食性昆虫ー捕食寄生性昆虫の三者間相互作用(三者系)は、自然生態系や農業生態系の基本構造の一つです。三者系において、植食性昆虫が餌とする植物種やその二次代謝産物(毒物質)が、寄生蜂の生態や行動に与える影響とそのメカニズムを調べることで、植物と捕食寄生蜂の間接的な関係の解明を目指しています。


研究トピック4:寄生バエ類の寄生戦略解明(古川)

寄生バエ類は寄生バチ類と双璧をなす、生態系において重要な捕食寄生者です。それにもかかわらず、後者と比べて寄生バエ類の生理、行動、生態は研究が進んでいません。私たちは寄生バエ類の室内飼育系統を確立し、寄生バエ類の寄生戦略を主に生理学の視点から明らかにしています。詳細は「昆虫免疫の研究」の項目をご覧ください。